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『クラッシュ』 ★★★☆☆ 監督・脚本:ポール・ハギス 出演:サンドラ・ブロック、ドン・チードル、マット・ディロン、ジェニファー・エスポジート、ブレンダン・フレイザー、テレンス・ハワード、サンディ・ニュートン、ライアン・フィリップ、ラレンズ・テイト ノーナ・ゲイ、キース・デヴィッド、トニー・ダンザ 2004年アメリカ/112分 |
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アメリカの都市の中でも移民が多く人種差別が多い街、ロサンゼルスが舞台のヒューマンドラマ。人種差別問題がテーマの映画ですが、ここまで人種差別のオンパレードだと見てるこっちが疲れてしまう。登場人物全員が人種問題に過敏になってて、言わなくていい酷い差別発言をつい相手に言ってしまって問題が生じたりこじれてしまう。差別発言をしなくてもいつかしてしまうんじゃないかと見てるこっちはドキドキしてしまう。こんなに人種の違いを意識して暮らさないといけないなんて、すごいストレス! アメリカに住みたくないわ〜と思ってしまう。 そんな風に、全体を通してギスギスした感じですが、最後にはちょっと心温まるエピソードもあります。でも、そんなエピソードがあったくらいで、人種問題のギスギスした感じが相殺されるわけでもなく、なんともストレスの残る感じです。救いようの無いアメリカの人種問題の現状をそのまま描いてます。 映画の中で、富裕層の白人は自分に対しリベラルな印象を持ってもらうために、本心とは関係なく、できるだけ黒人を優遇しているところが、今の上層白人を良く表現できてます。彼らは自分のイメージばかり気にしていて、イメージが良くなるなら人種問題さえも利用するのです。でも、自分のイメージを大切にする思考は、日本の政治家も見習ってほしいです。世界的に見ても日本の政治家は失言が多いような気がしますから。やはり移民国家でない日本だとこういう意識が芽生え難いんですかね。 映画に登場する人物はたくさんいるのですが、それぞれがもうまるっきり典型的なアメリカ人。 富裕な白人夫婦:夫はリベラルイメージで人気取りに必死、ほっとかれることの多い妻はヒステリー気味で情緒不安定(一般的にはカウンセラーに通うんでしょうね)。貧乏な白人:有色人種優遇政策(こういう諸法律が実際にある)などで煽りを受けたので差別主義者チックに。富裕な黒人夫婦:白人社会の中で、穏健な黒人を演じることで他の乱暴な黒人とは違うと思わせて今の信用を築いてきた。貧乏な黒人:日々窃盗強盗を繰り返すがそれを人種差別のせいにして正当化する下層黒人。ヒスパニック系:一応肌の色は白いが完全に不法滞在者やマフィア扱い。ペルシャ人:テロリストの多いアラブ人と混同されることに過敏になってる。中国人:とにかく喚く、うるさい、相手のせいにする(車の衝突事故を相手のせいにしてまくし立てる場面や、病院で大声でしゃべる様子には笑ってしまいました)。ちなみに登場人物はみんな市民権を得ているのですが、相手をけなす時は決まって「不法移民のくせに!」と言うのが滑稽ですね。 本当にそれぞれの人種の立場がよく描かれてると思います。 よく描けているだけに、これを見れば移民政策には反対したくなるような・・・ しかし、将来的に出生率が減り日本人が自然に減少していけば、相対的に移民の割合が増えるので、人ごととは思わず見るべきなんでしょうね。移民時代の人種差別問題をテーマとした新しい映画として★3つです。 |