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■ 『7月4日に生まれて』



『7月4日に生まれて』
★★★★☆
原題:Born on the Fourth of July
原作:ロン・コーヴィック
監督:オリバー・ストーン
出演:トム・クルーズ、ウィレム・デフォー、トム・ベレンジャー
1989年アメリカ映画/144分



 ベトナム志願兵ロン・コーヴィックの実話を基にした巨匠オリバー・ストーンの映画です。オリバー・ストーンといえば「JFK」「プラトーン」「ニクソン」そしてこの「7月4日に生まれて」など左翼的色彩の強い映画を撮ってきた監督です。(近年「アレキサンダー」も撮りましたが、これだけは政治映画じゃないと監督自身は言っています。詳しくはアレキサンダーの項で述べます。)「JFK」も「プラトーン」も「ニクソン」も「7月4日に生まれて」もベトナム戦争がテーマとなっていますが、それは監督自身が1967年から陸軍に従軍し、ベトナム戦争を経験していることが影響しています。もともと保守派である彼はベトナム戦争に行って現実を見た後、左翼に転向したのでその考えは深いものがあります。

 ちなみに、主演のトム・クルーズは、7月3日生まれです。二枚目の彼が傷病兵となり放送禁止用語を喚きながら小便を撒き散らす様は衝撃的でした。最後らへんハゲてるし。カクテルやトップガンなどよりずっといい演技してます。

 あらすじ − 7月4日の独立記念日に生まれたロンは、高校卒業後に海兵隊に入隊しベトナム戦争に志願するも、部下のウィルソンを誤射して死なせてしまい、ロン自身も銃弾に倒れ脊髄を損傷し、下半身不随となってしまいます。傷病兵となり、小便と糞だらけの病院のベットで、国に尽くした自分は、なぜこんな惨めな体になったのか後悔し続けます。国が予算を出さないため、病院の看護員が全員黒人で傷病兵の扱いもずさん極まりない。(傷病兵の扱いは実にナーバスな問題で、イラク戦争の時も劣悪な環境が大問題となり、政府は迅速な改善を命令しました。)その後、車椅子で地元に凱旋するも家族や友人からの「哀れなヤツだ」という視線が突き刺さります。結局彼は「人生の負け犬」になってしまったのです。いたたまれなくなったロンはメキシコの売春街に居つくのですが、そこでは同じような傷病兵たちがたくさんいました。そんな傷病兵たちを売春婦はわけ隔てなく優しく抱いてやります。この売春婦のかりそめの愛情がどれほどこの彼を癒したことでしょう。ロンはここで初めて童貞を失ったのです。自暴自棄な生活を送っていたロンでしたが、ついに多くの傷病兵たちと共に反戦運動に身を投じる決心をします。


 世の中の雰囲気に騙されて戦地に行った若者が、死ぬか、狂うか、手足を失い悲惨な目にあい、周囲の人間も手のひらを返して冷遇する現実を明らかにした作品です。日本も第2次大戦後、多くの傷病兵が路上で物乞いをしていた現実がありますから、多くの人が共感できるはずです。このようにオリバー・ストーンは現実を直視しリアリティを追求しているので、その言葉には左翼、右翼、両方にとって共感できるものなのでしょう。20歳越えた若者なら絶対見ておかなければならない作品です。文句なしの★4つでしょう!